開催レポート
アーティストのアトリエから出た廃材で作品を作ろう
捨てられるはずだったゴミがアートに変わり、新しい価値を生む
いくらなら売りますか、いくらなら買いますか?
- 講師:副産物産店、ワークショップタイトル:副産物産店で作品(商品)をつくろう、テキスト:藤田えり子/写真:森 昭人
ここから未来のアーティストが生まれるかも
子どもたちがアートに親しむプログラムを開催
ACKアートフェアの一環として、昨年に引き続き開催されたキッズプログラム。今年もアート好きの子どもたちが多く参加してくれました。集まったのは1、2日目は小学生、3日目は就学前の子どもたち。
プログラムの内容は表現型と鑑賞型ワークショップの二部構成からなり、参加者は2グループに分かれ、交代制で行われます。いずれの日程も表現型からスタートした組の子どもたちに、取材にご協力いただきました。
アーティストとものづくりをしたり、ガイドの案内でアートフェアの会場を回ったり。楽しかった3日間のレポートをお届けします。
「副産物産店」の二人といっしょに作品作り
まずは、いろんな廃材から気になるものを選ぼう
第1日目の講師は副産物産店のお二人、山田毅さんと矢津吉隆さん。アーティストのアトリエからでた廃材を使って、オブジェを制作している作家ユニットです。
「ここにはいろんなものがあるでしょう? 好きなだけ素材を使っていいので、自由に作品を作ってください」
ワークショップは1時間。
周囲に置かれた段ボール箱のなかには、木材の切れ端、蛍光色のアクリル板、何かがプリントされた紙、糸巻き、いろんな色のペンキがこぼれた厚紙などなど。おもしろい形やなんだか不思議なものがいっぱい。参加した8人の子どもたちは、さっそく次々に箱をのぞき込んで手に取り、素材選びが始まりました。
すぐに気に入った素材が見つかって、いきなり作りだす子。じっくりと吟味して探す子。最初に絵から描き始める子。取り掛かりはさまざまですが、表情は真剣そのもの。でも、みんな楽しんでいるのが伝わってきます。
素材をくっつけるグルーガンで火傷をしたり怪我がないよう、各テーブルにはスタッフが付いてサポートをしました。
自由に子どもたちの感性にまかせるままに
思い思いの個性がひらいた作品のできあがり
保護者のお父さんお母さんも一緒になって、工作を楽しみました。時には思わず大人目線で「これをくっつけたら?」「もっとこうしたら?」とアドバイスをするものの、子どもたちはおかまいなし。どんどんと自分の思うままに作品を組み上げていきます。
講師の二人はそんな子どもたちを見守るだけ。素材のカットやドリルでの穴あけなど手助けはするものの、自由にまかせるスタンスです。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、タイムリミットに。まだまだ作り足りない様子の子どもたちでしたが、残りは後から時間をとって完成させることになりました。
さあ、いよいよ作品発表です。
自分の作品にタイトルと値段をつける初めての体験
高い?安い?売ってもいいかはどう決める?
実は、今回のワークショップではちょっと特別なことがありました。作品にタイトルを付け、いくらなら売ってもいいか値段を付けてくださいというお願いです。ACKというアートの展示・販売の場ならではの試みであり、自分の作った作品の価値について考えるきっかけにしてほしいという意図からです。
売ってもいいとした作品は、翌日開催のワークショップで実際に販売もできます。
「では、ひとりずつお名前と作品名、値段を発表してください」
「色の付いた段ボールの紙がおもしろいので、これで街を作ろうと思いました。タイトルは『近未来的な街』。7000円で売ってもいいです」
「作品は『花束』です。300円くらい」
えっ、安くない?いいの?と大人たち。
「スパイダーマンみたいに、いろんなところに糸を巻きつけたかったので『何でも巻きつくクモ』。値段は2万円!」
ほかにも『古いお家』『秘密基地』『雲の穴からみた雲』『未来のすべり台』『未来の船』とどれも個性の表れたおもしろい作品ばかり。値段の決め方にはみんな迷ったようで、一所懸命考えて付けたけれど、持って帰りたいから売りたくないという子もありました。
最後に講師の山田さんが締めくくりました。
「みんな、しっかり考えてタイトルや値段を付けてくれました。この会場にはいろんな作品が展示されています。作家さんの作品についているタイトルを見たり、いくらで売っているか見てくれたらいいと思います。今日はありがとうございました」
ワークショップを終えて
講師:副産物産店 山田毅さん
「やっぱり素材の持っている魅力があり、またお母さんやお父さんと一緒だったので、僕らはちょっとだけ手助けするだけで、子どもたちの作りたいものを作って、いい経験をしてくれたんじゃないかなと思います。
今回、値段をつけるという体験をしてもらいました。できあがった作品はやっぱり感性というものでしかないので、これが一体いくらなのかとは、副産物産店をやっていても思うことです。価値ってなんだろうと改めて感じさせられるというか。
子どもが作っているからとか、廃材で作っているからとか、短い時間で作ったからとか、いろんな要素があるけれど、いろんなことを切り離した時に、ちゃんと作品として見えてくるというのはおもしろいなと思いました」
副産物産店は、山田毅(只本屋)と矢津吉隆(kumagusuku)が主に京都で活動するものの価値、可能性について考えるプロジェクトです。主な展覧会としては、2021年「副産物産店の“芸術資源循環センター”展」(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA/京都)があります。