For Kids

開催レポート

アートを観ながら感じたことを自由におしゃべり
おもしろかったこと疑問に思ったことを
みんなで仲良く共有して楽しもう


ここから未来のアーティストが生まれるかも
子どもたちがアートに親しむプログラムを開催

ACKアートフェアの一環として、昨年に引き続き開催されたキッズプログラム。今年もアート好きの子どもたちが多く参加してくれました。集まったのは1、2日目は小学生、3日目は就学前の子どもたち。

プログラムの内容は表現型と鑑賞型ワークショップの二部構成からなり、参加者は2グループに分かれ、交代制で行われます。いずれの日程も表現型からスタートした組の子どもたちに、取材にご協力いただきました。

アーティストとものづくりをしたり、ガイドの案内でアートフェアの会場を回ったり。楽しかった3日間のレポートをお届けします。



アートフェアの会場をめぐりながら
みんなで見て、考えて、聞いて、話そう

3日間共通の鑑賞型ワークショップをガイドしてくれたのは、京都芸術大学アート・コミュニケーション研究センター研究員の吉原和音さんと、アートプロデュース学科2年生の東田美怜さんです。
子どもたちが集まったところで、最初に東田さんからのお願いがありました。

「今日はみんなにやってほしいことが4つあります。」

「一つ『みる』すみずみまで見てください。二つ『考える』何に気づいたか、どう思ったか考えてください。三つ『話す』考えたことをみんなに話してあげてください。四つ『きく』みんなが話しているのを聞いてください」

みんなで一緒にアートフェアの会場をめぐり、考えたことや感じたことについておしゃべりしながら楽しもう。対話型鑑賞で、アート作品の新しい「見方」や「楽しみ方」を発見しようというのがワークショップのテーマです。



じっくり見れば見るほど発見がある
気づいたことを話しあってみよう

ガイドツアーの始まりは、ソウル在住の陶芸家ぺ・セジンの作品から。
シリアル番号を刻んだ小さなブロックを螺旋状に組み上げた卵のような形の作品を子どもたちが取り囲み、じっくりと目を近づけて眺めます。近寄りすぎて、思わず触りそうになる子も。

「なんか数字が書いてある」「続きの数字になってる」「上に穴が空いてて、中が空洞になってる」と発見がいろいろ。
小さな子どもたちは「アイスクリームだ!」「蜂の巣みたい」とも。
「すごい! 細かいところ見てくれてるね」とにっこりする東田さん。

続いて鑑賞したのは、てっぺんにキノコを生やしたシャイフル・アウリア・ガリバルディの石膏彫刻や、カズ・オオシロのゴミ箱そっくりの作品、会場に円を描いて並べたはかりとはかりの間をお箸やスプーンで繋いだ潘逸舟の作品、アニメのようなイラストと写実的な人物を混在させた、くきたなるきの絵画など。

子どもたちにとってはちょっと不思議な現代アートの数々に、素直な感想や疑問に思ったことなど、なかなかおしゃべりは尽きないようです。



コミュニケーションを大切に
ガイドは子どもたち同士の会話を手助け

子どもたちにはまずおしゃべりしてもらい、お互いの違いや言うことがわかるような橋渡しをして、子どもたち同士のコミュニケーションを通じて作品鑑賞を深めていくよう手助けするというのが、ガイドをする二人のスタンス。

今回、小さな子どもたちが気付いた問いを直観的に投げかけてくれるのに対して、小学生の子どもたちは自分の中で整えてから話し出すなど、違いが見えたのも興味深いところでした。

美術作品を鑑賞しながらたくさんおしゃべりして、子どもたち同士もガイドの二人とも仲良くなれて、楽しい1時間はあっという間に過ぎていきました。

「今日はいっぱいみんなのお話が聞けて楽しかったです。ありがとう」



ワークショップを終えて
講師:京都芸術大学アート・コミュニケーション研究センター

   研究員 吉原和音さん、アートプロデュース学科2年生 東田美怜さん

東田さん  一番の感想は何よりも楽しかった。子どもたちにありがとうってめっちゃ思います。特に小さな子どもたちとは、まず仲良くなったらおしゃべりしてくれるかなと思っていたので、みんな手を繋いで歩いてくれたり、心を許してくれてうれしかったです。」

吉原さん  子どもたち同士も初対面だったけれど、最初に創作のワークショップで自然に仲良くなっていたので、そこに混ぜてもらった感じです。

東田さん  鑑賞の楽しさというより、この人たちとここでしたこと、場所や人間関係が楽しかったと思ってくれたら。みんながいたからこそ楽しかったと思ってくれるのがうれしい。それが楽しければ、美術を鑑賞することが好きになってくれると思います。

吉原さん  これまでは美術館でお父さんお母さんの方から「何がみえる?」「これは好き?」などと話しかけていたと思いますが、これからは逆の方向性で子どもたちからも、問いかけていってほしいですね。



京都芸術大学アート・コミュニケーション研究センター(ACC)
アートの可能性を多角的に探る研究機関として京都芸術大学に附置された研究センター。ニューヨーク近代美術館で開発された鑑賞教育プログラム「VTC(Visual Thinking Curriculum)」を日本に紹介した第一人者、福のり子を初代所長に2009年4月設立。対話型鑑賞教育プログラム「ACOP/エイコップ(Art Communication Project)」を広義のアート・コミュニケーションと捉え、人が人との間で生きていくために最も重要な要素である、コミュニケーションのあり方・育て方に美術の分野からアプローチしています。
ACOPの実践展開に加え、対話型鑑賞のファシリテーターの育成、各領域の実践者の交流や情報交換、技術研鑽のコミュニティの運営を行い、アート・コミュニケーションのハブも担っている。また、全国の美術館や他大学との共同研究、芸術祭・アートプロジェクトなどと連携した地方創生やコミュニティ創出、社会的包摂への取り組みや、ACOPを応用した医療・福祉など対人援助者の研修、2012年度からは企業と提携した社内研修やビジネスパーソンに向けた人材育成の取り組みも展開しており、年々その活動の領域を広げています。

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