For Kids

開催レポート

身の回りのものを集めてどんどん積み上げて
白い石膏で覆われたアート作品をつくる
見慣れたものが姿を変えるおもしろさを体験しよう


ここから未来のアーティストが生まれるかも
子どもたちがアートに親しむプログラムを開催

ACKアートフェアの一環として、昨年に引き続き開催されたキッズプログラム。今年もアート好きの子どもたちが多く参加してくれました。集まったのは1、2日目は小学生、3日目は就学前の子どもたち。

プログラムの内容は表現型と鑑賞型ワークショップの二部構成からなり、参加者は2グループに分かれ、交代制で行われます。いずれの日程も表現型からスタートした組の子どもたちに、取材にご協力いただきました。

アーティストとものづくりをしたり、ガイドの案内でアートフェアの会場を回ったり。楽しかった3日間のレポートをお届けします。



いつもはやっちゃいけないことだけど
今日は堂々とやってください!

ワークショップ3日目は金氏徹平さんを講師に招き、代表的なシリーズの『White discharge』を作りました。この日は、小学生に加え6歳までの子どもたちも対象で、親子で参加できました。

「僕の作品の中でも、一番昔から作っている作品を今日はみなさんに体験してもらいます」と金氏さん。『White discharge』シリーズとは、日常で見慣れたものを積み上げ、白い石膏や樹脂で覆い隠した作品です。

スライドには雪に覆われて見えなくなった自動車の写真が映しだされました。

「僕の住んでいる京都では、年に1、2回はしっかり雪が積もります。
みんながよく知っているお家や車も、雪が積もると急に違うものに見えてしまう。
そういうところから作品を思いつきました」

「アーティストにどうやったらなれるかというと、やっちゃいけないと言われれていることをやることです(笑)。

でもやっちゃいけないことをやって美しいものを作る、人の考えが変わるようなものを作る、それが難しい」

「たまにみんなのイタズラでも周りの大人をハッとさせることがあるけれど、それを大人になっても続けているのがアーティストです(笑)。
今からするようなことを、お家でやると多分怒られちゃうと思うけれど、今日は堂々とやってください」



関係のないもの同士をくっつけて
おもしろい形のかたまりを作っていこう

会場には素材として、プラスチックのおもちゃや洗濯ばさみ、洗剤のボトル、何だかわからない形のものなど色々と用意されています。もちろん、家から持ってきたものを使ってもよし。

まずはトレーを台にして、選んだ素材をグルーガンでくっつけながら積み木のように積みあげていきます。
自分の手が届くギリギリまでトロフィーのように高く積んでも、グルーガンの接着力が強いので意外と大丈夫?
付き添いのお母さんもハラハラしながら手伝います。

「いつもは関係のないものが一つのかたまりになっていく状態を意識して、作ってくれたらいいと思います」と金氏さんがアドバイス。

時間いっぱいまで親子いっしょに遊んで、おもしろい形、不思議な形のオブジェができあがりました。



石膏をどんどんかけて固めていけば
真っ白な彫刻作品のできあがり

次はいよいよ、できあがったオブジェに石膏をかけていきます。
最初は石膏が入った紙コップを手に、スプーンで周りから少しずつ。
でもだんだん大胆に、コップをひっくり返して頭からかけていく子どもたち。テーブルの上はこぼれた石膏だらけになってきました。

「うちではこんなに思いっきりできないので、ワクワクしているみたい」とお母さん。

なんども石膏をおかわりしてかけて、元の色や形が見えなくなるまで、まるで雪が積もったみたいに白く覆われたら完成です。

「この中に何があるかわかる?」「みんなより、大きいのができたよ!」
子どもたちは大はしゃぎで、できあがった作品を自慢してくれました。

金氏さんも笑顔で「僕が作ったおっきいやつがこの会場に展示されてるんで、観てください。もしかしたらみんなが作ったほうがおもしろいかも」と締めくくりました。



ワークショップを終えて
講師:金氏徹平さん

「『White discharge』のワークショップは、大人でも子どもでもできるし、いろんなポイントで発見があるところが良いと思って続けています。特に子どもたちは失敗を恐れないというか、予測できないのがおもしろいですね。

石膏でせっかく作った作品が隠れてしまうのは、最初は一瞬嫌がるけれどすぐにスイッチが切り替わって、今度はかけることに集中しだすというか、いかに隠すかということを考え始める、視点の切り替わりが大事なところかなと思いました。

今回参加してくれた小さい子どもたちは、それぞれの興味が全然違うところにあって、それで最後まで突っ切っていく感じ。
こうしたら失敗するよ、崩れちゃうよと言ってもそのまま突っ切ってしまう、でもなんとかなっちゃう。それはそれでおもしろい作品ができたと思います」



金氏徹平
1978年生まれ、京都在住。美術家・彫刻家。京都市立芸術大学美術学部彫刻科准教授。2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了。身のまわりの事物を素材に部分を切り抜き繋ぎ合わせることで、既存の文脈を読み替えるコラージュ的手法を用いて作品を制作。国内外の美術館で個展の開催や、国内外の企画展・国際展で作品を発表するなど多岐に渡ります。

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