K06
MAKI Gallery
(東京)
MAKI Galleryは、気鋭の若手アーティスト・田村琢郎の新作を展示いたします。1989年大阪生まれの田村は、2016年に京都芸術大学を卒業したのち、名和晃平率いるアーティスト集団SANDWICHでアシスタントをしながら京都を拠点に制作を続けていました。田村は自身の身の回りから制作のインスピレーションを得ており、特にアスファルトや道路標識、カーブミラーなど‘交通’にまつわるモチーフを作品に多く取り入れます。彼は持ち味の鋭い観察眼と高い技術力、そして遊び心溢れる感性を通して、日常にある身近なものを元の文脈から切り離し、新たな存在意義を与える試みを行っています。
田村が2019年から制作を続けている「Lovers」シリーズでは、二本のカーブミラーがお互いを見つめ合っているかのように抱き合い、本来の役割である‘死角からの危険を映すこと’を完全に放棄しています。今回展示する最新作において、ミラーはますますくつろいだ雰囲気を醸し出しており、普段は硬質なそのボディはゆるく流動的に絡み合い、艶めかしささえも感じさせます。擬人化を経た両者は融合するにつれ、自利と利他の見分けがつかない転換点へと徐々に迫ります。相手に夢中なのか、それとも相手の‘顔’に映っている自身の姿に魅了されているのか定かではありませんが、ミラーの状況認識があまりにも欠如していることが、観る者に不安感を呼び起こし、極端な相互依存に伴う危険性を示唆しているかのようです。「Lovers」は、ミニマルな手段で物語を演出する実践であり、身体言語の微妙なニュアンスを利用して物体を主体へと転換し、私たちの日常環境に対する意識をひそかに変化させます。
Gallery Information
MAKI Galleryは、戦後の日本における前衛芸術家の紹介を目的として2003年に東京で設立された後、徐々に焦点を新進気鋭の現代美術家へと移してきました。2014年にオープンした表参道のギャラリーに加え、2020年より天王洲のTERRADA ART COMPLEX I & IIに大型スペースを新設しました。この3つの拠点で、マンゴ・トムソン、ミヤ・アンドウ、ススム・カミジョウ、マリウス・ブルチーアなど、国際的に活躍するアーティストの作品を幅広く取り扱うとともに、鍵岡リグレ アンヌや田村琢郎など、日本の若手アーティストをグローバルに紹介しています。MAKI Galleryは、Frieze New York(ニューヨーク)やThe Armory Show(ニューヨーク)、West Bund Art & Design(上海)をはじめとする国際的なアートフェアにも多数参加しています。
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